【展覧会感想】奈良国立博物館「毘沙門天―北方鎮護のカミ―」展

【美術館HP(展覧会ページ)】 

【会期】2/4(火)~3/22(日) 
※3/15(日)まで休館中。再開時期は未定。

現在休館中です

先日、開催中の「毘沙門天展」に行ってきましたが、現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、奈良国立博物館も3/15まで休館することが決定しました。(実質3/16(月)まで?)

国立文化財機構 国立博物館等臨時休館のお知らせ

今後どうなるかは注視しなければいけませんが、また再開したときの参考になれば幸いです。

毘沙門天とは

毘沙門天は、四天王像の北方を護る多聞天が独尊として祀られたものです。

展覧会のページには以下のように説明してあります。

四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)は、須弥山(しゅみせん)世界の四方にいて、仏教世界や仏法を守るカミです。このうち北方を守護する多聞天は、「毘沙門天」の名で単独の像としても造像、信仰され、四天王のなかでも特別の存在でした。

仏教の中にあって「神様」なのが不思議ですね。もとは古代インドの神様だったのが仏教世界に入って現在の姿になっています。○○天とつく神様はそういう出自をもつ存在です。上杉謙信が信仰していた印象が強くて武運長久・勝負ごとに願掛けする神様というイメージが強くありました。もちろんそういう意味を含めたお像もありますが、それよりも福徳をもたらす神様として信仰されていたらしいです。七福神に入っているのはそのためです。

噂で毘沙門天しかいないと聞いていましたが、本当にそうでした。
でも、それぞれ個性的で、おもしろい!知らなかったことがいっぱいで学びの多い内容でした。

驚いたこと

毘沙門天にも種類があること。独尊のお像しか知りませんでしたが、妻・吉祥天と子・善膩師童子(ぜんにしどうじ)との三尊像、双身(そうしん)毘沙門天像、兜跋(とばつ)形毘沙門天像とバラエティ豊かでした。

特に吉祥天・ 善膩師童子との三尊像は微笑ましい感じでした。鞍馬寺の三尊像がチラシ等にも載っていたもので、毘沙門天が額に手をやり遠くを眺めるようなポーズがかっこよかったです。(このポーズは後補らしいです。後補GoodJob!)同じく高知の雪蹊寺の三尊像で湛慶作で、他の像とは一線を画す表現でした。無著・世親像みたいなリアルな表情でした。

次に、双身は二体の毘沙門天像が背中合わせにくっ付いている状態でした。それぞれの口から出た牙がつながっていたのがなんとも滑稽でちょっと笑ってしまいました。これは勝敵(しょうじゃく)の意味で使われた像。調伏の修法の際に拝む像だそうです。

そして、兜跋(とばつ)形は中国、西域での姿を伝えるお像。なので宝冠や鎧などが個性的で、足元は邪鬼ではなく地天女・ 二鬼(尼藍婆ニランバ、毘藍婆ビランバ)が支えています。東寺の像が出展されていましたが、これは唐時代のもの。それが真似されて広がったことや伝播の中で改変されたことがわかりやすかったです。

好きな毘沙門天

今回は気になるお像がいっぱいあったのですが、その中でも好きだったのが岩手県浅井智福愛宕神社の毘沙門天像です。このお像は他のお像とは雰囲気が違っていました。
なぜかというと、全体がなた彫りだったからです。他はすごく細かい鎧の装飾や細工があったりするのに、これだけなたの彫り筋だけが文様となってすごく渋い雰囲気でした。しかも居たはずの尼藍婆、毘藍婆がなくなっていて、大きくてズッシリした体躯の毘沙門天を地天女が一人がんばっていたのがすごく印象的でもありました。東北らしい実直な感じがして、神社に祭られている「神像」として相応しいなと思いました。

もうひとつの主役「邪鬼」

毘沙門天はもれなく邪鬼をふみつけていました。仰向けだったり、うつ伏せだったり、時には結構アクロバティックな格好だったりします。恨めしそうに毘沙門天を仰ぎ見ているのですが、表情もなんだか憎めないですね。今回の展示では、邪鬼にも玉眼を入れているものもあり驚きました。
あと、 兜跋形の地天女(邪鬼ではないですが)、尼藍婆、毘藍婆の三人組は愛らしい!福岡県観世音寺の二鬼は毘沙門天に遠慮して、背後から覗き込んでいるような表現になっていて可愛らしかったです。

1Fのフォトスポット 向かって右が兜跋形毘沙門天です。ちょっと雰囲気違いますよね。

尼藍婆、毘藍婆のDAIGOさんばりのウィッシュポーズ、これはもう「映え」ですね!今回でこんな愛されキャラが発掘されるとは思いませんでした。御礼を言いたいくらいです。奈良博さん、ありがとうございます!

今のところ、展覧会が再開されるか何も発表されていませんが、少しでも開いてくれたらいいなと願いをこめて、ここに記しました。それくらいオススメしたい展覧会でした。

まったりとくつろぐシカ達
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