【拝観】東大寺戒壇院戒壇堂

戒壇堂のパンフレット 広目天様!

【東大寺HP】 

※現在、保存修理・耐震化工事のため拝観停止中(7/1より約3年間)
7/4(土)からは千手堂が代わりに拝観できます。(詳細はHPへ↑)

7/23(木)よりお堂の四天王像は東大寺ミュージアムで展示されています。
【東大寺総合文化センター お知らせ】 

私と東大寺戒壇堂

東大寺には他のお寺よりもとても親近感を覚えています。
それは、学生時代から東大寺のふもとで暮らし、学び、幾度となく訪れたことがあるからだと思います。東大寺の行事とともに季節の移り変わりを知ることが当たり前でした。

お堂それぞれの思い出や印象を持っていますが、戒壇堂は度々訪れたくなるところです。正確にはあの天平の四天王像に会いたくなるのです。こう書くと、アントニオ猪木にビンタされに行くファンの心理に似たものがあると思います。
今回の訪問は「耐震工事前にお堂でみられる四天王像はしばらく見納め」という考えがあったものの、もう一つ「なんだか疲れている自分の背筋をシャンとさせたい」という思いのもと訪問しました。

滑り込み拝観

拝観したのは6月27日。拝観停止は30日。文字通り滑り込みセーフでした。

当日は子供を預け、午後一番で自分の用事を済ませました。東大寺に向かうとギリギリ拝観時間に間に合いました。というのも、コロナウィルスの影響で拝観時間が16時までに短縮されていたのです。電車に乗る段階でヒヤヒヤしていたのですが、腹をくくって、近鉄奈良駅からは走って向かいました。久しぶりの「駅からダッシュ」です。

東大寺戒壇堂に行く最短ルートは?

戒壇堂は東大寺のお堂の中で一番西側(駅側)になります。いろんなルートから入れますが、駅から行くならこのルートが単純明快でいいのでは?というのを提案します。

  1. 近鉄奈良駅出口1または2から東大寺方面に向かうのは同じ。(赤線)
  2. 東へまっすぐ進む。出口1でも2でも、地下道に入ったら東大寺方面北東の地上出口から出る。そうしたら北へ進む。
  3. 次の交差点で右(東)に曲がる。そこを進むと正面に若草山、東大寺大仏殿の鴟尾、依水園の入り口が見えてくる。これは結構良い写真スポットだと私は思っています。(車も通るので気を付けながら)
  4. どん突きを道なりに左(北)へ進む。そのまままっすぐ。
  5. 突き当りに石の階段があります。(下の写真がそうです)そこを登れば戒壇堂があります。
地図 近鉄奈良から東大寺戒壇堂

※青線は「そっち通ると白壁の屋敷の間の小道で雰囲気がいいよ!」というルートです。

東大寺戒壇院戒壇堂
戒壇堂 水門町からの眺め

戒壇堂の魅力

戒壇堂はかつては受戒といって僧になるための厳粛な儀式が行われていた場所です。そのためか、お堂の中は普段は薄暗く、空気が止まっているような、静謐な感じを受けます。それが魅力の一つです。

入るとまず、お堂いっぱいの台座の上に多宝塔がドーンと中央にあります。多宝塔も結構大きいのでビックリします。そして、四天王像が四方を護っています。個人的にはこの四天王像各像を一つずつ眺めるのが、とても心が落ち着きます。残っている彩色も見えたりしますし、思っているよりも近くで見れている感じがします。台座の関係で、踏まれている邪鬼も物理的に近いです。自分の心持によっては、邪鬼に心寄せることもあるかもしれませんね!

今回は駅から走ってきて、到着したころにはゼーゼーハーハー息も荒く、頭から湯気が出ているような状態でした。こうしてお堂をグルグル回るように各像を拝見していくと呼吸も精神も整っていくような気がしました。湯気として出ていたのは、日ごろのウップン、弱ってた部分かもしれません。それを四天王像各位に浄化していただきました。
ありがとうございました!

今度は千手堂へ

戒壇堂が約3年ほど拝観停止になる代わりに西隣の千手堂が特別公開されています。歴史の中で何度も焼失しながら再建されてきました。普段はひっそりとしていて気に留めたことはありませんでした。

今度はこちらにぜひ拝観したいと思います。こちらのお堂には厨子入千手観音像・四天王像・鑑真和上像(いずれも重要文化財)等がいらっしゃるそうです。リンクの方もぜひご覧ください。納められている厨子の復元された扉絵も見事!こちらも見所では?
千手堂の歴史

戒壇堂の四天王像は東大寺ミュージアムでもう会えるようなのでご心配なく。どうやら法華堂の日光・月光菩薩と「天平美仏 夢の競演」らしいです。またこちらも行かなくてはいけませんね。

【展覧会感想】奈良県立万葉文化館「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展」+飛鳥池工房遺跡

遊べる浮世絵展

【美術館HP(展覧会ページ)】 

【会期】4/25(土)~6/21(日) 
※新型コロナの影響で5/19(火)からの開館

自粛明け初めての展覧会

5/31(土)に久しぶりに美術館に行きました。コロナの感染拡大前に滑り込んだのが、2月末の大和文華館。そこから約3ヶ月…

奈良県内の県立美術館と万葉文化館はまだまだ自粛の中にあって5/19から開けてくれていました。その頃は県またぎの移動が出来ませんし人は少ないだろうなと思っていました。私が行った時間帯(土曜午前)で同じ空間にいたのは3,4組だったと思います。

館内の感染予防対策

  • 入り口でのアルコール消毒と注意書きの紙を渡されました。スタッフの方が常時おられる感じです。
  • 窓口、もぎりはビニールカーテンで仕切られていました。
  • 看視員さんもフェイスシールドされていました。
  • 地下は閉鎖されていました。
  • 展示室、ショップ、レストランの前にも消毒が置いてありました。
  • 展示室内には、角々に2m空けるよう案内板がありました。
万葉文化館掲示板
万葉文化館掲示板 
万葉文化館からのお願い
入り口で配られた「万葉文化館からのお願い」

人が少なかったので、自然と間隔も開き、特に堅苦しい感じもなく見ることが出来ました。

概要

さて、展覧会は特別展「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展」。あの「公文」がこんなコレクションを持っているというのは初めて知りました。チラシには1986年から史料の収集と研究を続けてきたとあります。
WEBを見るとコンテンツが充実していたので、またゆっくり見たいなと思います。

公文教育研究会による浮世絵の収集と研究は、フランスの歴史学者フィリップ・アリエスの絵画資料を用いた中世ヨーロッパにおける子ども研究に触発されて1986年からスタートしました。現在、子ども浮世絵を含めた3,200点におよぶ子ども文化史料を保有しています。「くもん子ども浮世絵ミュージアム」では、保有する文化史料の中の約1,800作品(約2,135点)の子ども浮世絵を公開しています。 そこには日常生活や季節の行事の中で遊ぶ子どもの姿や、子どもをめぐる情愛豊かな情景や、まめまめしく子どもの世話をする母親など、子宝思想のもと子どもたちが家族や地域の大人たちに大切に育てられ、そして成長していった様子が生き生きと描かれています。「子ども浮世絵」を通してそこに描かれた子ども文化をしばしご堪能ください。

くもん子ども浮世絵ミュージアム HPより https://www.kumon-ukiyoe.jp/

盛り沢山の内容でした

子どもの遊びや生活の様子、節句の飾り、判じ絵(絵のなぞなぞ)、絵双六などおもちゃ絵、子どもに人気のヒーロー関連、百鬼夜行などモノノケ関連とさまざまな作品が並んでおり、気楽に楽しく鑑賞できました。子どもの姿は絵の中とはいえ現代に通じるものがありました。

浮世絵の絵師はそんなに詳しい方ではないですが、歌川国芳の戯画「ほおずきづくし」や鈴木晴信・喜多川歌麿の浮世絵、群魚・虫といった物尽くしもあったりして、ちょっと私得な展示でもありました。

組立絵

展示の中に「組立絵」というものがあったのですが、つまりはペーパークラフトのことです。

古典の物語の一場面(館の様子等)や甲冑などありました。一枚の紙にパーツをギュっと詰めて印刷されており、切り取って組み立てたようです。これも考えて作る人はすごいですよね。國學院大學大学院美術史ゼミの方々による実際に組み立てたものも展示されていて、より興味がわきました。
こんなゼミ楽しいだろうなあ。

金太郎=坂田怪童丸=坂田金時⇒源頼光⇒酒呑童子の話

展示を見ていて、この金太郎と酒呑童子のつながりをわかってないことに気づきました。勧善懲悪で江戸時代では人気の物語だったそうです。

実際の浮世絵を見ていると興味がわいてきたのでちょっと本など読んでみようかなと思います。『まんが訳 酒呑童子絵巻』(ちくま新書) あたりから始めてみようかな。

思わず絵に話しかけそうに

「1 愛される子どもたちー江戸の暮らしと風俗ー」の章
喜多川歌麿筆「名所風景美人十二相 赤子に乳を飲ませる母」では、赤子がこちらを見ながら、乳を引っ張って吸っている光景が描かれていて驚きました。あまりにも現代と変わってないと感じました。まさに自分事として非常に共感し、思わず笑顔に。
他にも、歌川国芳筆「山海愛度図会 乳が呑たい」といった作品もあり、いつの時代も赤ちゃんの仕草って変わらないのねと微笑ましく見てしまいました。

まとめ

今回は子ども自身が遊んで楽しむ作品やオモチャがありましたが、大人たちが子どもに向ける”まなざし”のようなものを表現している作品もありました。
「七つまでは神のうち」の言葉にあるように、子どもはあの世とこの世を往き来する存在とされています。特に昔は幼くして亡くなる子どもも多かったので、絵のなかではその儚さを永遠に留めたい願いもあったのでしょうか?少なくとも絵師の眼を介しては、とても温かく見守られていたように思います。

たくさんの子どもが描かれているだけで子孫繁栄=縁起良いものですよね。その描かれる姿は時代を経ても変わらないように思いました。思わずしみじみとした展覧会でした。

おまけ1:飛鳥池工房遺跡

万葉文化館は飛鳥池工房遺跡の上に建てられています。この遺跡では富本銭が鋳造されていたこともわかっています。そういう富本銭を作るワークショップなども以前は実施されていましたね!
遺跡も発掘した状態で保存されているのが廊下から、そして外に出て近くで見ることが出来ます。興味のある方はぜひ!

飛鳥池工房遺跡
飛鳥池工房遺跡キャプション

おまけ2:久しぶりに子連れで鑑賞

子供と一緒に展覧会に行くのは、生後3ヶ月のとき以来です。久々の家族での外出で、「とりあえず近場で」ということになり、私のわがままに付き合ってもらいました。

前回(3ヶ月のとき)は途中で泣き出して、再入場と退出を繰り返し、授乳をはさんで、結局私だけが会場に戻って見るというハードモードでした・・・
今回は機嫌よく見始めたものの、途中から声を出し始め、展示室が響くので悦に入ってやめてくれません。夫のファインプレーで収まり、途中で寝てくれて、何とか最後まで落ち着いて見られました。
そのとき、看視員さんに「お母さん!」と声をかけられ、何かと思ったら、「(室内は)結構冷えるので、ひざ掛けか何かありますか?」と。「あ、ないんです。(忘れてた)」と答えました。その節は親切にありがとうございます。久々すぎて掛け物とか忘れてました!

~乳幼児連れの方へ~
・展示室内は冷えるので掛け物をお忘れなく。
・泣き出したり奇声をあげ始めたら、潔く外に出る。必ず再入場できるかの確認を。

せんとくん
入り口にいつもいる

【展覧会感想】大和文華館「水のめぐみ 大地のみのり」展

【大和文華館 展覧会ページ】

【会期】2020年2/21~4/5
※3/3より臨時休館、そのまま会期終了

美術館にいけなかった2ヶ月間

新型コロナウィルス感染拡大によって、美術館・博物館は臨時休館を余儀なくされました。私も春のシーズンに美術館に行けずムズムズしながら、命を最優先に考えてSTAY HOMEの日々でした。美術館に行かなかった期間としては出産直前と産後の3ヶ月間が最長だったので、それほどダメージは少ないように思います。

先日奈良でも緊急事態宣言が解除され、美術館等も再開する情報が聞かれるようになりうれしい限りです。その前に、臨時休館になる直前(2/29)に観に行けたこちらの展覧会について記しておきたいと思います。

どんな展覧会でも企画、広報、展示やいろいろ万全の状態で始められるように準備に尽力された担当の学芸員の方がいます。一番悔しいのはその方々ではないでしょうか?
「私は幸運にも展覧会を見られたので、嬉しかったです!楽しかったです!」という気持ちを伝えたいと思います。

全体の印象

展示全体から感じたことは、実に健やかであること。
この展覧会タイトルの副題に「野菜、果物、魚介の美術」とあり、まあそのままなのですが、要はこれらが豊穣・豊漁を願う、おめでたい意味を持って描かれたりしているということです。コロナウイルスの不穏な空気が漂う中、この人類不変のおめでたいモチーフを見て「ちょっと元気が出た」と思いました。
その意味での「健やかさ」がありました。

こういった作品は中国が始まりで東アジアに伝播します。田畑を耕し魚を取るという自給自足の生活は世俗から離れて暮らす者の理想となり広く人気となったためでした。それを中国・朝鮮の作品から日本のものまで見られるのは興味深かったです。

一番気になっていた作品は

一番気になっていた作品は、チラシ・ポスターにも採用されている岸連山筆「野菜涅槃図」(個人蔵)です。

これは見立涅槃図というジャンルの作品です。元となる仏教絵画の涅槃図は釈迦が入滅する場面を描いたもので、中央に横たわる釈迦が、その周りには悲しむ弟子たちやたくさんの生き物を描いています。江戸時代になり見立涅槃図が盛んに描かれ、そのうちの一つが大根を釈迦に見立てた果疏涅槃図です。

私は若冲が好きなので、最初見たとき若冲の果疏涅槃図を思い浮かべてしまい、「若冲にこんな作品あったっけ?」と考えてしまいました。若冲の作品は水墨作品でしたね。
伊藤若冲「果疏涅槃図」 (Google Arts&Cultureより)

若冲の方は形もかなりデフォルメしていてユーモラスな雰囲気がありますが、岸連山の作品は野菜たちのみずみずしい様子が伝わってきます。いろんなモノが描かれている画面なのにまとまりがあるように見えました。それは画家の構成力が効いているのもありますが、元の仏教絵画の涅槃図が頭に入っていてパロディとしても楽しめているからかもしれません。

そのほか気になった作品

富岡鉄斎筆「車海老図」「伊勢海老図」
とにかく新鮮なみずみずしい様子が伝わってくる作品。鮮度を絵に閉じ込めたといってもいいのでは。これは頂き物の車海老・伊勢海老のお礼の手紙に添えられた絵で、こんなお礼状が着たら贈ったほうも嬉しくなると思います。

李宗謨筆「陶淵明故事図巻」
自給自足の生活で隠遁者の理想像となった陶淵明。その故事の一つ、弦のない琴を弾く段が印象的でした。陶淵明は音痴だったのでこの琴をつまびいて音を想像して楽しんだというもの。音痴だったことにちょっと笑ってしまいましたが、なんとも風流なエピソードですね。

明るい画面で華やかな作品。蝶もおめでたいモチーフです。パステルのようなやさしい色調の草花や野菜と鮮やかな色の蝶の対比がきれいです。中国・清時代の作品ということで、西洋絵画の技術も使われたのかな?と思わせる作品です。

最後に

観に行った日は土曜日で、ちょうど14時からの列品解説があるところでした。担当の学芸員さんから展示スペースで各作品の解説を聞けるというものです。一時間程度、途中で輪から抜けても入ってもよいというスタンスなので気軽に参加できます。(入館していれば無料です)

私はこの解説にめったに遭遇することがなくて(むしろちょっと混むので、あえてはずすことが多いです)、最初だけ聞いてみました。わかりやすく丁寧に解説されていて、キャプションだけでは頭に入ってこないこともスッと理解できました。これを目当てに来られてる方も多いでしょうし、支持されているから長く続いているんでしょうね!



新型コロナウィルスがもたらした社会への影響は美術館の教育普及の取組み、来館者を増やすための方策にも大きな変革を迫っています。
この大和文華館でも講演や独自の講座、音楽のコンサートなどいろいろなイベントを毎回企画していました。それがafterコロナ、withコロナの世界ではリスクとなってしまうのは本当に残念です。しかし、悪いことだけではなくて、オンラインの活用など地方に住む人間にとってはこれから可能性が広がることも増えてくるように思います。どちらにしろ、大きな転換点を迎えていると思います。

私に出来ることは、感染対策を個人でもきっちりやって、再開する美術館の展覧会に行くことです。今回のことで途中で休館になってしまったり、開くことさえ出来なかった展覧会(そしてその担当の学芸員さん)のことを思うと悔しい気持ちですし、行きたいところには行っておくべきだなと思いました。

【端午の節句】我が家の鎧飾りから甲冑に目覚める

新型コロナウイルス感染拡大の影響で美術館・博物館も休館が続いており、大阪・京都に外出できていません。奈良はまだ感染者数も爆発的に増えていないので、予防をしながら淡々と日常を過ごしています。

そんな中でも、子どもは日々成長していきます。我が家は男の子がいますので、5月5日端午の節句、初節句をもうすぐ迎えます。五月人形はどうしようか?といろいろ思案していましたが、夫のものがあるということで、それを飾ることになりました。

昨今の五月人形は

さて、お店などで見る節句の飾りは、ケース入りの武将の兜飾りが多かったです。スペースの問題もあるのでしょうね。

例えば、伊達政宗、上杉謙信、徳川家康、真田幸村といった人気どころ。政宗と謙信の兜はちょっと似てますが、カッコいいのはよくわかります。ネットだともうちょっとマニアックな武将の兜を作っているところもあるみたいです。

私なんかはちょっとした知識があるがゆえ、「この武将の死に方が良くない」「人気だけど実は大したことはしてない」「最終的には天下泰平した家康が正義」とか余計なことを考えてしまって逆に選べないです・・・それも大抵、大河ドラマからの知識だったりして・・・

我が家の鎧飾り

これに弓矢と刀が左右に付きます。(全体を写すと汚かったので割愛)

思っていたよりとても立派な鎧飾りが出てきました!
義母いわく、義祖母(夫の祖母)が大阪松屋町で買った「ええやつ」とのこと。松屋町というとCM出してるような有名な人形のお店がいろいろあるところですね。

仕事から帰った夫がこれらを見て一言。
「これは室町以前の甲冑のスタイルだな・・・」

夫は鎧兜、甲冑にやけに詳しいのです。そう言われたら気になって、いろいろ調べてみました。(図書館は閉館中なので、ネットでいろいろと)

弓と刀の意味

この鎧飾りには弓と刀が付いてきます。飾り方の画像を見ると、向かって右に刀、左に弓だそうです。それぞれの意味については秀光人形工房さんのブログ記事がわかりやすく、参考になったので引用します。

長い弓には神様が降りてきて宿るとされ、邪気を祓う為矢を射る流鏑馬(やぶさめ)のような儀式が行われたり、魔や鬼は弓のビィーンビィーンという弦の音を嫌うとして、弦を鳴らす「鳴弦(めいげん)」が行われます。弓と矢は「破魔」と呼ばれ、神社でも魔除けとして売られています。
太刀は太く短いため、実戦用の刀とは違ってあくまでも儀式用であり実用ではありません。飾る際も有事ではないので鞘(さや)を上にして、柄(つか:手で握る方)を下の方にして飾ります。魔物は光り物を嫌うとされ、太刀の刃物は光り物として護身具に最適だったのです。
このように、弓と太刀には「邪気や魔が近寄って来ないように」する魔除けの意味が有るのです。

秀光人形工房スタッフあたふた日記《弓と刀ってどうしてあるの?》

京鎧飾

まず、私はこの「平安武好 作」が気になって、いろいろ見ていたら、現在「平安武久」という名を継ぐ京鎧飾職人さんがいらっしゃいました。やはり他の伝統工芸品と同じように専門の伝統工芸士さんがいたのですね!(当たり前か)これも美術工芸品なのだと職人さんの存在で気づかされました。「武好」の情報は出てきませんでしたが、30~40年前の平安の一派の方なんだろうと思います。

京鎧飾は京甲冑とも表記されていました。端午の節句にこういった兜鎧を飾る意味も出てきましたのでご紹介します。

大願成就=京甲冑はいくさの武具としてではなく「大願成就」「子孫栄達」のシンボルとして社寺に奉納される甲冑をコンセプトに制作されています。(中略)京甲冑は美術工芸の要素が最も高いとされる室町時代以前の大鎧をもでるにしたものが多く制作せれています。

大阪・久宝堂 https://www.rakuten.ne.jp/gold/miyage/gogatu/k-kattyu/k-kattyu.htm
うちの鎧 吹返(ふきかえし)の装飾
うちの鎧 大袖(おおそで)~鳩尾板(きゅうびいた)あたり 紐づかいや裏地も素敵
コトバンクより

鎧兜を見る機会は何度かあるのですが、確かに社寺に奉納されているものじゃないと綺麗に残らないですよね?!奉納するものなので、豪華な装飾を施すのも納得です。

夫が少し解説していたのは、「胴部分は室町以前だとこの鎧みたいなタイプで、でもこれだと鉄砲の弾は防げなくなる。戦国時代に入ると西洋の甲冑を取り入れた南蛮胴具足ができた。」と。

確かに、戦い方が変わるとその防具も変わってきますね。日本の甲冑の歴史が日本服飾史HPに載っていたので、細かい変遷はこちらを参照されるとビジュアルありでわかりやすいかと思います。

甲冑を見られるところ

私か覚えている「甲冑を見たところ」は東京国立博物館の常設展示、あとは大阪城天守閣の特集展示です。
特に大阪城は戦国武将の兜が主な展示でしたが、甲冑や陣羽織もあり、とても面白かったです。何せ知っている武将が出てくるとテンション上がりますよ!またやってほしいなと思います。その時は子どもと一緒に見たいものです。

国宝・重文の甲冑がどこに所蔵されているか探したところ、「国宝および重要文化財甲冑 全国所在一覧」をうさぎ塾さんのHPで見つけました。
※この所在一覧のページは許可なく無断リンクお断りだそうで、リンクはうさぎ塾さんのトップページに飛ばしてます。「甲冑所在」で検索された方が早いかも? いろいろ見てみると自分で鎧を作るというとても魅力的な取り組みをされています。鎧着初式も素敵!無性にやりたくなってきました。

話は飛びましたが、東博は所蔵品として結構な点数があるようです。奈良の春日大社も多く所蔵しており、宝物館でときどき展示をしています。これは先ほどの願いをこめて甲冑が社寺に奉納されるということから納得されると思います。

そして、国宝・重文指定の甲冑類の約4割を所蔵しているのが、愛媛県今治市の大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)です。しまなみ海道の大三島にあります。噂には聞いていましたが、これはとんでもない量です。源平にゆかりのある甲冑と伝わっているようで、歴史ロマンを感じられそうです。ぜひ行ってみたいですね!

最後に

節句の飾りとはいえ、甲冑を間近でゆっくり見る機会もないので、おうちで今のうちに鑑賞しておきたいと思います。もれなく夫のウンチクを聞くことになるでしょうが、今回も勉強になることばかりと期待しています。

これを調べていて見つけた日本服飾史のHPは甲冑以外も見ごたえがあるのでちょこちょこ訪問したいですね。

数年後子どもにいろいろ聞かれても答えられるように、「大事に思っているんだよ」「元気に育ってほしいんだよ」という気持ちも一緒に伝えられたらいいなと思います。

【展覧会感想】奈良国立博物館「毘沙門天―北方鎮護のカミ―」展

【美術館HP(展覧会ページ)】 

【会期】2/4(火)~3/22(日) 
※3/15(日)まで休館中。再開時期は未定。

現在休館中です

先日、開催中の「毘沙門天展」に行ってきましたが、現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、奈良国立博物館も3/15まで休館することが決定しました。(実質3/16(月)まで?)

国立文化財機構 国立博物館等臨時休館のお知らせ

今後どうなるかは注視しなければいけませんが、また再開したときの参考になれば幸いです。

毘沙門天とは

毘沙門天は、四天王像の北方を護る多聞天が独尊として祀られたものです。

展覧会のページには以下のように説明してあります。

四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)は、須弥山(しゅみせん)世界の四方にいて、仏教世界や仏法を守るカミです。このうち北方を守護する多聞天は、「毘沙門天」の名で単独の像としても造像、信仰され、四天王のなかでも特別の存在でした。

仏教の中にあって「神様」なのが不思議ですね。もとは古代インドの神様だったのが仏教世界に入って現在の姿になっています。○○天とつく神様はそういう出自をもつ存在です。上杉謙信が信仰していた印象が強くて武運長久・勝負ごとに願掛けする神様というイメージが強くありました。もちろんそういう意味を含めたお像もありますが、それよりも福徳をもたらす神様として信仰されていたらしいです。七福神に入っているのはそのためです。

噂で毘沙門天しかいないと聞いていましたが、本当にそうでした。
でも、それぞれ個性的で、おもしろい!知らなかったことがいっぱいで学びの多い内容でした。

驚いたこと

毘沙門天にも種類があること。独尊のお像しか知りませんでしたが、妻・吉祥天と子・善膩師童子(ぜんにしどうじ)との三尊像、双身(そうしん)毘沙門天像、兜跋(とばつ)形毘沙門天像とバラエティ豊かでした。

特に吉祥天・ 善膩師童子との三尊像は微笑ましい感じでした。鞍馬寺の三尊像がチラシ等にも載っていたもので、毘沙門天が額に手をやり遠くを眺めるようなポーズがかっこよかったです。(このポーズは後補らしいです。後補GoodJob!)同じく高知の雪蹊寺の三尊像で湛慶作で、他の像とは一線を画す表現でした。無著・世親像みたいなリアルな表情でした。

次に、双身は二体の毘沙門天像が背中合わせにくっ付いている状態でした。それぞれの口から出た牙がつながっていたのがなんとも滑稽でちょっと笑ってしまいました。これは勝敵(しょうじゃく)の意味で使われた像。調伏の修法の際に拝む像だそうです。

そして、兜跋(とばつ)形は中国、西域での姿を伝えるお像。なので宝冠や鎧などが個性的で、足元は邪鬼ではなく地天女・ 二鬼(尼藍婆ニランバ、毘藍婆ビランバ)が支えています。東寺の像が出展されていましたが、これは唐時代のもの。それが真似されて広がったことや伝播の中で改変されたことがわかりやすかったです。

好きな毘沙門天

今回は気になるお像がいっぱいあったのですが、その中でも好きだったのが岩手県浅井智福愛宕神社の毘沙門天像です。このお像は他のお像とは雰囲気が違っていました。
なぜかというと、全体がなた彫りだったからです。他はすごく細かい鎧の装飾や細工があったりするのに、これだけなたの彫り筋だけが文様となってすごく渋い雰囲気でした。しかも居たはずの尼藍婆、毘藍婆がなくなっていて、大きくてズッシリした体躯の毘沙門天を地天女が一人がんばっていたのがすごく印象的でもありました。東北らしい実直な感じがして、神社に祭られている「神像」として相応しいなと思いました。

もうひとつの主役「邪鬼」

毘沙門天はもれなく邪鬼をふみつけていました。仰向けだったり、うつ伏せだったり、時には結構アクロバティックな格好だったりします。恨めしそうに毘沙門天を仰ぎ見ているのですが、表情もなんだか憎めないですね。今回の展示では、邪鬼にも玉眼を入れているものもあり驚きました。
あと、 兜跋形の地天女(邪鬼ではないですが)、尼藍婆、毘藍婆の三人組は愛らしい!福岡県観世音寺の二鬼は毘沙門天に遠慮して、背後から覗き込んでいるような表現になっていて可愛らしかったです。

1Fのフォトスポット 向かって右が兜跋形毘沙門天です。ちょっと雰囲気違いますよね。

尼藍婆、毘藍婆のDAIGOさんばりのウィッシュポーズ、これはもう「映え」ですね!今回でこんな愛されキャラが発掘されるとは思いませんでした。御礼を言いたいくらいです。奈良博さん、ありがとうございます!

今のところ、展覧会が再開されるか何も発表されていませんが、少しでも開いてくれたらいいなと願いをこめて、ここに記しました。それくらいオススメしたい展覧会でした。

まったりとくつろぐシカ達

【コラム】展覧会チケット半券の管理方法

いまはチケットレスの時代ではありますが、まだまだ紙のチケットが主流です。見に行く私たちもチケットの半券を展覧会を見に行った記録として残していることが多いですね。

その溜まったチケット半券の管理の仕方について、自分なりの方法をご紹介します。

《見終わってすぐ》一時保管

見終わってすぐのチケット半券は手帳に挟んでいます。私の場合、これだとなくさないです。

チラシや展示目録もしばらくはファイルに入れて取っておきます。でも、ブログを描いたり、半年ぐらいして溜まってきたら捨てますね。名残惜しいですが、仕方ないです。

 

《1年終わって》しっかり保管したいとき

手帳やファイルにはさんで保管していたものは最終的にスクラップブックに貼り付けて保存します。手帳を替える時期にいつもやっているような気がします。

こちらがスクラップブック。最初は無印でちょっとこだわっていたものの、普通のスクラップブックになり、今は100均のものになっています。たっぷり貼れればそれでよし!

ちなみに今どき古臭いですが、新聞の切り抜きも保管しています。
一番最初に貼ったページ。

最初は、高校生のときに行った書道展と大学入学前に行った「大英博物館の至宝展」。田舎から出て神戸に行くのドキドキしたなあ…こんなこともチケット半券を見れば蘇ってきます。

奈良に来てからはこんな感じです。ベタに若草山や興福寺国宝館、あとは奈良国立博物館、唐招提寺…奈良のお寺は最初によく行っていました。

興福寺国宝館はまだ昔の古い建物だった頃、阿修羅像の爆発的人気が出る前です。

最近の半券ブックはこちら。 動画を見ていただくと、めくるときパラパラなってちょっと危ういんですが、後ろにも注意書きや日付などある場合は上や横だけをテープで止めて見られるようにしています。あと、誰と行った等メモもちょこっと書き込んでいます。これだけで立派な記録となりますよね。ほんと散財したことがよくわかる笑

以上、私の場合の保管方法でした。

他の皆さんの半券の保管方法はどんな感じでしょうか?そういうのもいろいろ情報交換できたらいいな~と思いながら、なかなかそういう仲間が見つからないでいます。

今年行きたい展覧会2020-関西を中心に-

タイトルの通り、今年行きたい展覧会を 関西を中心に調べて並べてみました。考えるだけでワクワクしてきます。下記のリストは自分用の備忘録のようなものです。よかったら参考にどうぞ。

※カラヴァッジョ展も対象ですが、見に行けたので除いています。

「行けるものなら行きたい!!」と東京などでの開催分も混ざってますが、99%行けないでしょう。さすがに今はまだ遠征は厳しいかと思います。

サイトやこの本も参考にして調べました。

展覧会リスト (会期の最終日の早い順)

佐川美術館 デザインあ展 12月14日~2月11日

大阪市立美術館 特集展示 生誕150年記年 船場の絵描き 庭山耕山-近大大阪の四条派- 12月18日~2月9日

神戸市立博物館 建築と社会の年代記-竹中工務店400年の歩み- 1月11日~3月1日

大阪高島屋7Fグランドホール 京都の若冲とゆかりの寺 2月21日~3月8日

アサヒビール大山崎山荘美術館 清宮質文-限りなく深い澄んだ空気- 12月14日~3月8日

メナード美術館(愛知県小牧市) 所蔵企画展 額縁のむこうの音楽-そこにはどんな音が聴こえるのか? 1月2日~3月8日 

マドカホール(岸和田市立文化会館) 塩田千春展 永遠の糸 2020年2月5日~3月15日

国立国際美術館 インポッシブル・アーキテクチャー-建築家たちの夢 1月7日~3月15日

中之島香雪美術館 上方界隈、絵師済々Ⅰ 12月17日~3月15日

奈良県立美術館 特別展 生誕90年 田中一光 未来を照らすデザイン 1月25日~3月15日

奈良国立博物館 特別展 毘沙門天-北方鎮護のカミ- 2月4日~3月22日

和泉市久保惣記念美術館 絢爛たる源氏絵-重要文化財 源氏物語手鑑- 1月19日~3月22日

大和文華館 特別企画展 水のめぐみ 大地のみのり-野菜、果物、魚介の美術- 2月21日~4月5日

大阪市立東洋陶磁美術館 特別展 竹工芸名品展:ニューヨークのアビーコレクション-メトロポリタン美術館所蔵 12月21日~4月12日

府中市美術館 ふつうの系譜 3月14日~5月10日

京都国立近代美術館 チェコ・デザイン 100年の旅 3月6日~5月10日 

京都国立博物館 特別展 聖地をたずねて-西国三十三所の信仰と至宝- 4月11日~5月31日

MIHO MUSEUM MIHO MUSEUMコレクションの形成-日本絵画を中心に- 3月14日~6月7日

大阪市立美術館 フランス絵画の精華  2020年4月11日~6月14日

京都市京セラ美術館 杉本博司 瑠璃の浄土 3月21日~6月14日(新館)京都の美術 250年の夢 第1部江戸から明治へ:近代への飛躍 4月18日 ~6月14日(本館)

神戸市立博物館 コートールド美術館展 3月28日~6月21日

京都市京セラ美術館 特別展 京の国宝展-守り伝える日本のたから- 4月28日~6月21日

細見美術館 飄々表具-杉本博司の表具表現世界- 4月4日~6月21日

福田美術館 若冲誕生 ~葛藤の向こうがわ 3月20日~6月21日

あべのハルカス美術館  安野光雅展 4月29日~6月24日

あべのハルカス美術館 ムーミン展 7月4日~8月30日

九州国立博物館 開館15周年記念特別展 海幸山幸 7月21日~9月13日

サントリー美術館 知って楽しい日本美術 7月22日~9月22日

相国寺承天閣美術館 若冲と近世絵画 1期 8月2日~10月11日

国立国際美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 7月7日~10月18日

中之島香雪美術館 企画展 上方界隈、絵師済々Ⅱ 9月5日~10月18日

泉屋博古館 瑞獣伝来-空想動物でめぐる東アジア三千年の旅- 9月12日~10月18日

出光美術館 江戸絵画の華 第1部 9月19日~11月3日

京都市京セラ美術館 奇才 江戸絵画の冒険者たち 9月12日~11月8日

相国寺承天閣美術館 若冲と近世絵画 2期 10月18日~12月20日

出光美術館 江戸絵画の華 第2部 11月7日~12月20日

大阪市立美術館 天平礼賛 歴史の中の古典美術 10月27日~12月13日

神戸市立博物館  ボストン美術館展 芸術×力 10月24日~1月17日

アーティゾン美術館 琳派と印象派 東西都市文化が生んだ芸術 11月14日~2021年1月24日

※青字は関西以外で開催分

大型の展覧会で注目しているのは、ボストン美術館展。日本美術の名品を持っていますので、期待しています。コートールド美術館展やロンドン・ナショナル・ギャラリー展は前評判もいいので夫婦で見に行くでしょう。

あと若冲関連も展覧会が多いので、高島屋(巡回)・福田美術館・相国寺承天閣美術館どれかに行けたら…

新しくできた福田美術館、リニューアルの京都市京セラ美術館には、一度足を運んでみたいと思います。

【展覧会感想】あべのハルカス美術館「カラヴァッジョ展」

【美術館HP】https://www.aham.jp/

【公式HP】 http://m-caravaggio.jp/

【会期】2/16(日)まで

展覧会の概観

2020年1発目はカラヴァッジョ展から。とても楽しみにしていました!

一昨年、夫婦でイタリア旅行にいったとき、るるぶのガイドブックにカラヴァッジョの作品巡りの特集がありました。その時にすごく惹かれてましたが、時間が足りなかった…現地では見られませんでした。

現地で実物を見るのが私の理想ですが、せっかく日本に来てくれるのだから見ない手はない!
しかし、最初の札幌展の時点で作品が届かないまま終了したり、不穏な感じでした。大阪展では「 ホロフェルネスの首を斬るユディト」「 瞑想するアッシジの聖フランチェスコ 」がイタリア側の手続きの問題で来ないことに…それでチラシのコピーが「赦したまえ。」か??夫と「さすがイタリア・クオリティ!」と皮肉を込めて言ってしまいました。
ともあれ、10点(?付の作品を含む)も作品が揃うのは貴重な機会です。

 大阪展のみ展示 

  《執筆する聖ヒエロニムス》

  《悲嘆に暮れるマグダラのマリア》

カラヴァッジョ周辺の作品も見応え充分でした。コラムヤマザキマリ先生のカラヴァッジョに扮したコメントやわかりやすいカラヴァッジョ周辺画家のキャプションが読みやすかったので、理解が進みました。他にもコラム等読み物が多めだったのですが、展示が40数点と多くなかったので、文字を追っていても辛くなかったです。

あと、イタリア全土に散らばる彼の作品の紹介パネル…写真撮りたかった…まだまだ見ていない作品が多いことよ!これはまたイタリア行かなあかんやつ!!

カラヴァッジョという画家について

彼の人生はイタリア全土を横断します。

若いときはミラノで修行、画業が認められローマで引っ張りだこ。でも素行が悪くてすぐ喧嘩したり、やっかみをかって訴えられたり…それでも庇護者がいたり、やはり天才的な画業は 常に評価されていたという印象です。

終いには乱闘で殺人を犯してしまい(過失致死?)ローマを逃げ出してしまいます。南へと向かい、ナポリでも他の画家に大きな影響を与えます。またナポリでも乱闘騒ぎを起こし、今度はカラヴァッジョが刺されるいう事態に。

その翌年、恩赦を請いにローマで向かう途中、熱病にかかり38歳で亡くなってしまうという壮絶人生でした。太く短いながら、残したものは大きかったのだな、と今回の展示では感じさせます。

特徴

それは生々しいほどの写実的表現・光と影(闇)のコントラスト。

これはもはや劇画です。鑑賞者を物語へグッと引き込む力があります。宗教画であれば、自分事として鑑賞者が引き込まれるように意図して描いているように思えます。ハルカス美術館の上席学芸員の方のコラムに、「聖女を描いていても、そのモデルは娼婦だったりする。聖と俗が表裏一体となって、そのはざ間で「生」を表現していた」というような文言があり、カラヴァッジョのおもしろさを感じました。

はっとするような写実表現の素地は、最初の方で展示されていた果物などの静物画を描いていた若い頃に鍛えられたのかな?と私は想像しています。

印象的な作品

《法悦のマグダラのマリア》

法悦(ほうえつ)とは「 仏の道を聞いて起こる、この上ない喜び。転じて一般に、うっとりするような喜び。エクスタシー。」とgoogleでは出てきますが、私は信仰心によってもたらされる最上級の喜び、それによって精神的に満たされた状態と解釈しています。この状態が宗教心があるのかないのか微妙な日本人にはわかりにくい、そしてのめりこみ方が新興宗教的で表情もちょっと怖いなと正直思ってしまいました。 見てるうちに性的表現とも感じてしまったりして、余計に怖かったり…違和感が拭い去れません。

「何かが違う?? この感じを言語化するとしたら…」

それは出産直後の自分の姿ではないかと。

まあ自分が約半年前に出産したばかりと言うのもあるのですが。 脱力したマグダラのマリアと十数時間の陣痛に耐えズタボロになった自分の身体を重ねました。生まれたてのわが子を胸に抱いたとき、自然と涙があふれてきました。 彼女と同じ、精神的にはこの上ない喜びと安堵に満たされていました。それが「生きている」実感、「生きる」ということでは? 自分の勝手な解釈ですが、そんな姿に感じられたのです。

最後に

彼は人生も作品も、光と闇、聖と俗を行き来しながら、「生」を表現し続けた画家だと思います。それが今回の私の個人解釈につながりました。それだけでも行ってよかったと思います。

今回、画家についての「評伝」が面白いなと感じました。会場にもタペストリーでその文言の一部が展示されていました。カラヴァッジョはいろんな悪評がありますが、画業が順調なことへの妬みから書かれている部分も多いようです。一方で率直に評価されていたり。書く人物の立ち位置によって評価も変わってくるところが興味をひきますね。

あとはもう「イタリアに行きたい!!!」 これだけです。

自己紹介

美術との出会い

もともと小学生くらいから歴史が好きで、大学でも歴史を学びたいと奈良にやってきました。その頃は考古学がやりたかったというのもあります。

大学の授業で美術史の概論を受け、興福寺などの課外授業で仏像を見に行ったりするうちに、「美術作品を研究するのって面白そう!!」と考えるようになりました。先生も「授業受けるくらいなら、実物見に行ってた方が良い。」とか「無理しないで」と言う人で、ユルそうで優しそうだったというのもあります。(実際は思ってるほど優しくはなかった…)

元は考古学志望で発掘現場のアルバイトも経験しましたが、出てくる遺物に正直私はテンションが上がらなかったです。「美」をどう定義するかにも拠りますが、「美しい」作品を見て、いろいろ考察してみたいと思いました。指導教授が作品のコンテキスト(背景)を分析するのが主な手法だったのでした。それに影響されて、今でも作品の技法よりその作品の注文主についてや、それが生み出された時代背景に興味があります。

そんなこんなで美術史ゼミに所属し、学芸員になりたかった私は大学院まで進学しました。大学院1回の時が勉強する意欲に燃えていて、一番展覧会や寺社に行けていた時代だと思います。ただ卒業論文も修士論文もひどい出来で、研究の道は自然と考えなくなりました。

最低限の修士論文で修了、なんとか就職し、転職し、忙しい日々に突入。それでも時間を見つけては展覧会にも足を運んできました。

現在は結婚して専業主婦となり、昨年は子どもも生まれました。 昨年はさすがに自分の体調や子ども第一で、思うように展覧会にも行けなくなりました。そんな中でも産後初めて展覧会に行ったときは、自分を取り戻すことができたように思います。

Twitterで展覧会の感想を流していたのですが、やはり文字数に制限があると思っていることの半分も表現できていません… なのでブログを開設し記録していくことにした次第です。

好きなジャンル 

  1. 近世絵画
  2. 仏教美術
  3. アルフォンス・ミュシャ
  4. イタリア・ルネサンスの美術

1.近世絵画

学生のときの研究対象がルーツになっています。

卒業論文では若冲の「動植綵絵」、修士論文では狩野山雪筆「雪汀水禽図屏風」について研究しました。そこから狩野派など安土桃山~江戸初期の屏風襖から、若冲以外の『奇想の系譜』の画家たち等、近世絵画全般は今も大好きです。

2.仏教美術

指導教授がその分野を専門としていて、見る機会が多かったのも理由としてあります。

お寺で仏像を拝観するのもその一つ。奈良は由緒あるお寺が多いので、仏像を楽しむには適した場所です。お堂でみる仏像は博物館で見るよりも本来の威厳をまとっているように感じます。そこから人々の信仰・祈りの場面を知りたいと思いながら拝観しています。

3.アルフォンス・ミュシャ & 4.イタリア・ルネサンスの美術

他の西洋美術や現代美術ももちろん見に行きます。西洋美術で一番好きなのはミュシャです。あと、新婚旅行でイタリアに行ってから、ルネサンス期の作品にも興味がわいてきました。本物の威力というのはすさまじいです。

はじめに 

このブログは主に、私ごじょが行った展覧会や神社仏閣の拝観についてレポートしたり、情報発信をしていく予定です。

それ以外にも美術に関係することや住んでいる奈良のことについても書いていきたいと思っています。

自分のための備忘録としての色が強いですが、読んでくださる方が少しでも「行ってみたい」「楽しそう」と思っていただけるような内容にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ごじょ