【2020年展覧会感想】泉屋博古館「瑞獣伝来」展

【美術館HP】 

【会期】9/12(土)~10/18(日) 
※会期終了

概要

(ずいぶん前に見てきた展覧会です。いろいろ思い出しながら書いています。)
タイトルにある「瑞獣」とは、「吉祥をもたらすとされた空想の動物たち」のことを言います。(展覧会図録)そのうち東アジアで親しまれてきた龍・鳳凰・虎に焦点を当てて、その変遷の歴史を追っていく展覧会でした。

もともと個人で龍の歴史に関する文章、しかも人に読んでもらうための文章を書いていたこともあり、絶対に来ようと思っていました。その文章を書くまでにこの展示を見たかったくらいです。滅多に買わない図録も今回購入しました。最初の山本尭氏「総論 瑞獣探源―東アジアにおける系譜と起源―」で、すごくわかりやすく情報がまとまっていると思いました。

龍は古代中国の青銅器から画像石、鏡、金具の文様などからその意匠が見られました。青銅器から始まるのは、さすが泉屋博古館です。時代が下るにつれ、私が見慣れた姿になっていきます。南宋の水墨画からは思い描く龍の姿をしていたので、日本の龍の姿のベースになっていると思います。

今回の見所の一つ、建仁寺大方丈礼の間の雲龍図は海北友松の代表作、見事な襖絵です。大きい作品で会場の中での存在感がすごかったです。筆に迷いがなく龍の表情も引き締まっていて、こちらに緊張感を与えてきます。これが桃山時代の勢いでしょうか?江戸時代になると顔の表情もしょんぼりして情けない感じの龍が少なからずいます。比べてみると面白いですよ!

虎もやはり青銅器から追っていきます。そこはここの館の強みですね。日本では本物の虎を見ることができず、伝わってくる虎の絵画(特に南宋の画僧・牧谿の虎)と猫のしぐさのハイブリット型で描かれたものが多いような気がします。それがまたユーモラスで可愛いらしさも生んでいると思います。

応挙の「虎図」はのっぺりとした従来の虎とは異なり、一歩踏み込んで、より質感を大事にしながら絵としてきれいに収まるように書かれている気がしました。キャプションで「機知に富む都会的瑞獣図」と評されていたのが的を射ているなと思いました。

最後に展示されていた木島櫻谷の「写生帳」の虎がもう、動物園の虎そのもので(当たり前)、やはり瑞獣として描かれる虎と実際とでは違うことを感じました。「瑞獣」たらしめる何かが作者によって入れられているのだと思います。

鳳凰

チラシなどのヴィジュアルに友松の龍とともに出ているのが、伝辺文進「百鳥図」の鳳凰です。展示室でもちょうど友松の雲龍図の真向かいに展示されていて、“対バン”しているような状態でした。とても大きなサイズの作品なので龍に負けていません。周りを囲む鳥たちが平和な空間を作り上げています。ゆったりと見ていられる作品でした。
この作品と相国寺所蔵の林良「鳳凰石竹図」は若冲の鳳凰とも似ており、私が興奮したのは言うまでもありません!若冲が模写したかもしれない作品を自分も見ていることに感激しました。

まとめ

今回は「もう少し見たかった!」と思える展覧会でした。ただ、ここの企画展示室がそれほど大きくないのが悔やまれます。それぞれの項目でもっと作品を集めて見てみたいと思いました。
展覧会は終わってしまったけれど、京都には禅寺の天井画があります。そこでいつでも龍が見られます。「そうだ 京都、行こう。」の特集で各所紹介されています。展覧会の続きはお寺へ!

企画展示室から中庭を望む 芝生が美しい

常設展 中国青銅器の時代

以前来た時にも見ましたが、久しぶりだったので寄ってみました。やはりボリュームがすごいです。
私は学生のとき、奈良国立博物館の青銅器コレクションが初めての青銅器だったのですが、東洋古代史の授業の一環で鑑賞し基礎を学びました。ここのコレクションはレベルが違います。虎卣(こゆう)・鴟鴞卣(しきょうゆう)といった可愛らしい青銅器も多いので、お気に入りを見つけるような気持ちで覗いてみるといいと思います。

余談

上の写真で見えているロビーでお茶(温・冷)のサービスがあります。特に暑い時期だとありがたいですね!
椅子も用意されていて休憩できるようになっています。のんびりと美しい芝生を眺めているのもいいものですね。

【展覧会感想】京都国立博物館「皇室の名宝」展

皇室の名宝展@京都国立博物館

【京都国立博物館HP】

【展覧会ページ特設ページ】事前予約もここから

【出品リスト10/5更新分】 

【会期】10/10(土)~11/23(月祝) 

概要

この展覧会は、令和という新しい世になったことを寿ぎ、宮内庁三の丸尚蔵館に所蔵されている作品、主に皇室関係の逸品を公開するものです。東京以外でまとまって見られる機会は今回が初めてだそうです。今回の改元に際し、過去の即位に関わる物品も見られ、時代の変わり目に立ち会えていることを幸運に感じました。

私は宮内庁三の丸尚蔵館にはまだ行ったことがありません。しかし、若冲の作品を多数所蔵しているので、絶対に行こうと思っている博物館です。東京にもなかなか行けないですし、この機会に見られるのは本当にありがたいと、ワクワクしながら久しぶりの”京博”に足を運びました。

お目当ては若冲!

お久しぶりの「動植綵絵」8幅とまだ見れていない「旭日鳳凰図」は絶対見ようと思っています。

しかし、行ったのは前期。旭日鳳凰図は後期展示です。他にも後期には結構見ごたえある作品が多いような気がします。なので、さっそく後期も行かないとなあ…と贅沢な悩みが出てきてしまいました。(上の出品リストをご参照ください)

「動植綵絵」 新しい見方をしてみる

「動植綵絵」、京都におかえりなさい!前後期で4幅ずつの公開です。

展覧会に行くちょっと前、人間ドックの待ち時間のことです。開幕前日でNHKのカメラが入って展示を紹介しているとき、ちょうど動植綵絵や応挙の牡丹孔雀図を紹介していたので、フライングした気分でした。しかし、目の前で見ることができて素直に嬉しかったです。

その中の「薔薇小禽図」は30幅の中でもなんとなく自分が納得いってない感じがあって、繰り返し見ていました。 描かれた薔薇自体が西洋画と異なり、非常に平面的なのが違和感があるのは自分でもわかるのですが、その他の花との組み合わせも何か気にいらないというか…こんな風に非常に歯切れの悪い説明になって、まだまだ若冲の意図をくみ取れてないんだなと反省しました。
好きな作品を穴が開くほど見ることは簡単だと思います。でも、あえて気に入らない作品がどこが嫌で違和感があるのか見ていくのも面白いですね。こういうことは他の展覧会でもやってみようと思います。

「近世絵画百花繚乱」のコーナーは見過ごすべからず

先ほどの若冲作品もこのコーナーに含まれます。若冲以外もまあ豪華共演で、思わず会場を行ったり来たりして目に焼き付けました。しかもほぼ前後期で展示替えしてしまうので、見たい作品を作品リストでチェックしてから早めに予約するのが吉です!

●海北友松「浜松図屏風」
6曲1双のゆったりとした浜辺の様子に千鳥が群れ飛ぶ図柄。海北友松といえば龍図のような水墨の激しいタッチの作品が思い浮かびますが、こういったやまと絵題材の屏風も残しており、大きな画面での構成は画家の力量を感じさせます。ちょっと浮世離れしたゆったり感じがとても好きです。

●狩野探幽「源氏物語図屏風」
こちらも大御所!探幽の描くやまと絵の屏風もめったに見ないですね。源氏物語の各場面が屏風全体にちりばめられて、優美な世界がありました。表具の枠?のところが葵の御紋と桃?宝珠?のワッペンのようなものが張り付いていて、枠?まで豪華でした。おそらく嫁入り道具だったのでは?

●円山応挙「群獣図屏風」
コの字型の展示室の奥にバーンとありました。存在感抜群でした。いろんな動物たちが描かれていて、見ていて飽きない作品。お馴染みのモフモフの犬もいましたよ♪

絵巻も見所多し

前半の展示、絵巻のコーナーも見ごたえがありました。時間区切りで入った人が列をなして溜まりがちなので、ゆっくり見たい方は先に他の部分を見て戻る形がいいと思います。

前期では「蒙古襲来絵詞」の教科書に載る有名シーン(てつはうが放たれる場面)が出ており、テンション上がりました。そこばかりでなく、周りに沢山描かれるモンゴル人の様子もしげしげと見ることができました。服装が今のモンゴルの伝統衣装そのままに見えたので、やはり見てきたものを忠実に再現しようと頑張ったんだな等と思いながら拝見しました。

また、久しぶりに見た「春日権現験記絵」も良かったです。中世絵巻の基準ともなる作品、いつ見ても人物の描線ややまと絵表現がキレキレで無駄なく美しいです。線がきれいというのは絵師の技量の高さを物語る目安だと私は考えています。鑑賞者としても基本に立ち返らせてくれる作品でした。

あと、これまた久々の岩佐又兵衛作品、「小栗判官絵巻」。実際に見た記憶が残っていないのですが、ちょっとグロテスクな感じもある鮮やかな絵巻に目を奪われました。人物表現が特徴的なのでグロテスクに見えるだけかもしれません…久々すぎてわからなくなってきました…

※紹介した絵巻3作品は巻替えで後期も展示されます。

皇室=雅、和だけではない

三の丸尚蔵館の所蔵品=御物というわけではありませんが、何らかのゆかりがあるものでしょう。今回の展示の章立ての中に「唐絵へのあこがれ」「漢に学び和をうみだす」という小項目がありました。スルーしがちですが、これは皇室の品々だけでなく日本文化が歩んできた道だと改めて思いなおしました。

いま、世間一般にいう皇室からくるイメージは雅、宮廷文化、和風、古典的、伝統的なものが強いです。しかし、それは長い歴史の中で最先端の異文化を取り入れながら醸成されてきたものの結晶です。または明治以降のイメージ戦略で植え付けられたものかもしれません。そんな中で、今回、大陸文化の作品群や和漢の考え方が共存する作品群がまとまって展示してあるのは、個人的には意味のあることだと思いました。

後期も楽しみです

後期も行くかは未定ですが、行けるなら行きたい所存です!何せ近世屏風のコーナーがほぼ総入れ替えですから!行けなくても、今回書の作品など語りつくせていない部分もあるので、それについてまた書くかもしれません。
何度も言いますが、行かれる予定の方はぜひ出品リストをしっかりチェックしてお見逃しのないよう予約してください。